「ふるさと納税」についてもう一度考えてみませんか?
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「ふるさと納税」制度は、制度創設当初の「ふるさとやお世話になった自治体を応援する」という理念から大きくかけ離れ、「官製通販」のようになっているのが現状です。東京都は、「ふるさと納税」制度へ参加せず、見返りを求めないという寄附本来の趣旨等を踏まえ、廃止を含めた制度の抜本的な見直しを行うよう、国に求めています。
「ふるさと納税」とは?
「ふるさと納税」制度は、個人が、ふるさとやお世話になった自治体を応援する仕組みとして、平成20(2008)年度に創設されました。自治体にした寄附のうち自己負担額2,000円を差し引いた額が、所得税と住民税から減額(控除)される制度です(控除額には上限があります)。
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「ふるさと納税」により東京都民の税金が流出しています
「ふるさと納税」による東京都及び都内の区市町村の住民税流出額は、年々増加しています。令和7(2025)年度の減収額は2,161億円(都民税862億円、区市町村民税1,299億円)。これまでの累計は1兆1,593億円にのぼります。
このまま「ふるさと納税」による流出が増えていくと、都民のために使われるべき住民税収入の減少が続き、これまでの行政サービスが受けられなくなる可能性があります。
グラフ出典:令和6(2024)年度以前は総務省「ふるさと納税(寄附)に係る寄附金税額控除の適用状況について」より
令和7(2025)年度は総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和6年度実施)」より
都民税の減収額はどのくらい?
令和7(2025)年度の都民税減収額は862億円。東京都における、以下のような各事業の年間予算に匹敵します。
※金額は令和7年度当初予算
「ふるさと納税」の問題点とは
1.自治体サービス低下
住民税は、自らが居住する自治体の行政サービスに必要な経費を、そのサービスを受ける地域住民が負担し合うものです。これを「受益と負担の原則」と言います。「ふるさと納税」は、地域の活性化や、被災した自治体の復興支援に寄与する面もあるものの、居住する自治体の住民税収入が減少し、行政サービスの質の低下につながります。
2.所得による不公平
税金は、経済力のある人により大きな負担を求め、公的サービスの費用とすることで、所得再分配をはかる役割があります。しかし、「ふるさと納税」による控除額の上限は、所得が高いほど高くなる仕組みとなっています。高所得者ほど、多額の返礼品を受け取ることができてしまう現在の制度は、公平性の観点からも問題があります。
※ふるさと納税をした方が①家族構成「夫婦+子2人(大学生と高校生)」かつ②給与収入のみの場合で自己負担額2,000円を差し引いた金額(総務省資料より)
3.返礼品競争
現在、より多くの寄附金を集めるために、自治体間で過度な返礼品競争が続き、官製通販と化しているのが実態であり、見返りを求めない寄附本来の趣旨を促す制度となっていません。また、返礼品の調達や、広告、仲介サイト委託料などの様々な経費が生じており、実際に自治体が活用できる額は、寄附額の5割程度にとどまっています。
さらに、近年は自治体や事業者によるルール違反によって「ふるさと納税」制度参加の指定が取消となる自治体が増加していたり、自治体や民間企業と国との間で訴訟が行われるなど、返礼品競争に伴う問題が顕在化しています。
グラフ出典:総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和7年度実施)」より
「ワンストップ特例」の問題点
「ワンストップ特例」は、ふるさと納税の利用拡大を図るため、マイナンバー、マイナポータルを活用した確定申告の簡素化までの間の特例的な仕組みとして導入された、「ふるさと納税」の寄附先が5自治体以内の場合に、確定申告せずに控除が受けられる制度です。
しかし、「ワンストップ特例」を利用すると、本来は所得税(国税)から控除されるはずの額まで、住民税(都民税・区市町村民税)から控除されます。
マイナンバーカードの普及率が約8割まで拡大していることに加え、既に所得税において各種控除を確定申告書へ自動入力するマイナポータル連携も実装されており、確定申告の簡素化は進展しているため、「ワンストップ特例」は廃止すべきです。
東京都の対応
「ふるさと納税」制度が多くの問題を抱えたまま拡大し、都民のために使われるべき大切な税金が、他自治体や仲介事業者へ流出し続けることには、歯止めをかけなければなりません。東京都は、国に対し、寄附本来の趣旨等を踏まえ、廃止を含めた制度の抜本的な見直しを行うよう求めています。
東京都から国への具体的要望内容
(1)受益と負担という地方税の原則や寄附本来の趣旨等を踏まえ、廃止を含め抜本的な見直しを行うこと。
制度を見直す場合には、
・住民税の控除額(特例分)を所得税から控除する仕組みへの変更
・返礼品の段階的廃止
・控除額への定額の上限設定などを早期に実現すること
(2)「ワンストップ特例」制度は廃止すること。
廃止までの間、地方自治体の減収分については、全ての地方自治体に財源を措置すること。